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原子力問題

2011年4月12日 (火)

ドイツ国営ラジオのNHK報道局長インタヴュー

ドイツの国営ラジオDeutschlandfunkが、201147日にNHKのしみず報道局長にインタヴューした記事についてTwitterTweetしたらすごい反響があったので抄訳した。急いで訳したので洗練された文章ではない。お気づきの点があればご指摘いただきたい。

見出し以降、黒文字はナレーター、青文字は実際の音声の独語訳。文中敬称略

"Wir unterbrechen das Programm"

我々は番組を中断する
Erbebenberichterstattung beim japanischen Sender NHK

日本のNHKにおける地震報道
Von Silke Ballweg
(報告:ジルケ・バルヴェク)

Auf Erdbeben ist man in der öffentlich-rechtlichen Rundfunkanstalt Japans, NHK, so gut vorbereitet wie bei keinem anderen Programm der Welt. Doch das Beben vom 11. März war und ist eine besondere Herausforderung für NHK und seinen Nachrichtenchef Yoshihiko Shimizu.

日本の公共放送局NHKほど地震に対してすぐれた備えをしている局は世界にない。それでも3月11日の地震は、NHKとしみず・よしひこ報道局長にとってはなみなみならぬ挑戦だった。

Das Satellitenprogramm von NHK bringt am Nachmittag des 11. März eine Übertragung aus dem japanischen Parlament. Man sieht, wie die Abgeordneten miteinander diskutieren und über Vorschläge und Ideen abstimmen:

3月11日午後NHK衛星放送の国会中継。国会議員が審議決定する様子が見られる。

Mit einem kurzen Signalton wird um 14:46 Uhr Ortszeit plötzlich ein blauer Schriftzug mit einer Landkarte eingeblendet: Im Nordosten der Hauptinsel Honshu hat sich soeben ein Erdbeben ereignet. Der Reporter aus dem Parlamentsstudio, der gerade noch über die politische Debatte berichtet hat, unterbricht und informiert nun, welche Präfekturen von dem Erdbeben betroffen sind.

14時46分、短い予告音とともに、字幕と地図が画面に映った-東北地方で地震がありました。国会のスタジオから審議を中継していたアナウンサーが中断し、どの県が地震に遭ったか報道する。

"Ibarai, Fukushima, Miyagi, Sendai, Iwate, ..."
「茨城、福島、宮城、仙台、岩手・・・」

Japans öffentlich-rechtliche Rundfunkanstalt NHK ist seit Jahren mit einem einzigartigen Erdbeben-Frühwarnsystem ausgestattet. Sobald sich irgendwo in Japan ein Beben ereignet, blendet der Sender automatisch eine Erdbebenwarnung ein. Das Besondere an dieser Information ist, dass sie vor den eigentlichen Erschütterungen kommt. Denn das System basiert auf der Tatsache, dass bei einem Erdbeben zwei Arten von seismischen Wellen entstehen. Das Warnsystem registriert die Energie der ersten, noch ungefährlichen Welle und warnt direkt über alle Fernseh- und Radiokanäle. Diese paar Sekunden können lebensrettend sein, weil sie den Menschen die Möglichkeit geben, sich rechtzeitig in Schutz zu bringen.

日本の公共放送局NHKでは、何年も前から無類の緊急地震警報システムを装備している。日本のどこかで地震が発生すると同時に、番組で自動的に地震警報が映し出される。このシステムは2種類の地震波があるという事実に基づくので、実際の揺れの前に警報が出るという特長がある。警報システムは、最初の危険のない波のエネルギーを確認し、すべてのテレビとラジオチャンネルに直接警告する。この数秒間によって、人々が身を守る準備ができ、人命を救うことができるのだ。

Bereits in dem Moment, in dem sich das Erdbeben ereignete, kannten die Mitarbeiter von NHK die Stärke. Anderthalb Minuten nach dem Beben hatte der Sender sein Programm geändert, alle Kanäle - sowohl Fernsehen als auch Radio - brachten nun ein Sonderprogramm: Der 56 Jahre alte Yoshihiko Shimizu ist seit 2008 Nachrichtenchef von NHK.

地震が発生したその瞬間、すでにNHK職員は震度がわかっていた。数分後、番組は変更され、テレビとラジオすべてのチャンネルで特別番組を開始した。56歳のしみず・よしひこは、2008年からNHKの報道局長をつとめる。

"NHK hat ein automatisches System. Ab Erdbeben der Stärke 6 stellen wir unser Programm automatisch um."

「NHKは、自動システムをもっており、震度6以上の地震で番組を自動的に変更する。」

Shimizu selbst erlebte das Beben auf einem Termin außerhalb von NHK. Doch er wusste, dass im Funkhaus in Shibuya auch ohne ihn alles nach Plan laufen würde. Denn weil sich Erdbeben in Japan so häufig ereignen, sind die Mitarbeiter routiniert und wissen genau, was zu tun ist.

しみず自身は、NHKの外での仕事中に地震に遭ったが、渋谷のスタジオでは彼がいなくても計画通りに動くことがわかっていた。日本では地震が頻繁に発生するので、職員は熟練しており何をすべきか詳細がわかっている。

"Unsere Journalisten haben ungefähr eine Minute Zeit, um auf das Sonderprogramm umzustellen, aber das klappt. Wir haben rund um die Uhr, 24 Stunden am Tag, einen Moderator vor dem Studio, der kann jederzeit ins Studio gehen und mit der Live-Sondersendung beginnen."

「我々の報道陣は、特別番組に切り替えるために約1分間しか時間がないが、うまくいく。一日24時間スタジオの前に司会者がいつでもスタジオに入って特別番組を生放送できるよう待機している。」

Für die Journalisten in Tokio war auch schnell deutlich, dass das Erdbeben einen Tsunami ausgelöst hatte. NHK besitzt zwölf Hubschrauber, die sind in ganz Japan verteilt und können jederzeit starten, wenn irgendwo etwas passiert. Und so zeigte NHK am 11. März kurz nach dem Beben Bilder der Tsunamiwelle, die auf Japans Ostküste zuraste. Aus der Vogelperspektive konnten die Zuschauer in Japan mitverfolgen, wie die Welle in Sendai auf Land traf: Die Wassermassen verschlingen Autos und Häuser, sie überspülen Felder und Gewächshäuser.

東京のジャーナリストにとっても、地震が津波を発生させたことはすぐに疑う予知がなかった。NHKは12機のヘリコプターを所有しており、日本全国に配置され、なにかが起きたらいつでも発進できる。それで、NHKは3月11日に地震後に東部海岸を襲った津波の映像を流した。日本の視聴者は、津波がどのように仙台に押し寄せたか空中からの映像を見ることができた。水の塊が車や家をのみこみ畑や温室を洗い流す。

NHK ist wie wohl sonst kein Sender in der Welt auf Erdbebenberichterstattung spezialisiert. Und dem vertrauen die Japaner, denn wenn es irgendwo im Land wackelt, schnellen bei dem Sender die Einschaltquoten nach oben. Doch man darf sich das Programm nicht im schnellen Nachrichtenstil von CNN vorstellen. Im Gegenteil. Das reguläre NHK-Programm wirkt oft altmodisch und angestaubt. Und am 11. März beschrieben die Moderatoren die dramatischen Bilder, die zeigten, wie ein ganzer Landstrich unter den Wassermassen begraben wurde, distanziert und unbeteiligt.

NHKは、おそらく世界で稀な地震報道専門の放送局である。日本人がNHKを信頼していることは、国のどこかが揺れるとすぐに視聴率が跳ね上がることでわかる。だが、CNNの迅速な報道スタイルを連想してはいけない。その逆だ。NHKの通常の番組は、時代遅れの印象を頻繁に与える。そして、3月11日、地域全体が水の塊に埋もれた劇的な映像を、司会者は距離を置いたまま無関心に説明した。

"Egal, was passiert, auch wenn sie sehen, dass eben noch fahrende Autos von dem Wasser erfasst werden und untergehen, unsere Moderatoren sollen ruhig bleiben. Denn wenn sie emotional würden, dann würden auch die Zuschauer von Gefühlen überwältigt. Aber unsere Moderatoren sind geschult, distanziert zu bleiben, wir wollen Panik vermeiden."

「何が起きようと、たとえ走行中の車が水に捕えられ沈むのを見ても、我々の司会者は冷静でいるべきだ。彼らが感情的になったら、視聴者も感情に打ち負かされる。彼らは、距離を置くよう教育をうけている。我々はパニックを避けたいのだ。」

Bei weniger starken Erdbeben dauert das Sonderprogramm von NHK maximal einige Stunden. Nach dem 11. März berichtete der Sender eine Woche lang nur über die Erdbebenregion: Die Bilder waren auch aus moralischer Sicht eine Herausforderung, sagt Nachrichtenchef Shimizu:

あまり大きな地震でない場合、NHKの特別番組は最長でも数時間。3月11日後は、一週間にわたり地震のみを報道した。映像も、道徳的見地からの挑戦だったと、報道局長のしみずは言う。


"Aus Respekt vor den Angehörigen zeigen wir eigentlich keine Bilder von toten Menschen oder von Sterbenden, aber manchmal hatten wir Bilder direkt aus dem Hubschrauber, dann ließ sich das nicht immer vermeiden. Aber grundsätzlich ist es so, dass wir keine sterbenden Menschen zeigen wollen, zumal ja viele Bilder mehrmals wiederholt werden."

「遺族への敬意から亡くなった人、あるいは死にかかっている人は映さない。だが、たまにヘリコプターから直接送られた映像では避けられないこともある。しかし、基本的に死にかかっている人は映したくない。だからなおさら多くの映像が何度も繰り返される。」

Fast vier Wochen nach dem Erdbeben beherrschen die Entwicklungen in Fukushima noch immer die Nachrichten bei NHK. Auch beim internationalen Kanal NHK World. Allerdings ist es für NHK schwierig, mit den mangelhaften Informationen von Tepco, der Betreibergesellschaft des Atomkraftwerks, umzugehen:

地震後ほぼ4週間、福島の展開はいまなおNHKのニュースであり、国際放送NHKワールドも同様だ。とはいえ、NHKにとって原発を稼動させている東電からの不十分な情報を扱うのは難しい。

"Eigentlich müssen wir alle Informationen weitergeben, die wir bekommen, aber wir müssen auch überlegen und abwägen, was passiert, wenn wir Panik verbreiten."

「本来、我々が入手する情報はすべて伝えなければならない。しかし、我々がパニックを広めたら何が起きるかも考慮し選ばなければならない。」

Große Schlagzeilen wie "Radioaktive Wolke zieht nach Tokio", die vor einigen Tagen auf der Webseite eines großen deutschen Politikmagazins stand, würde NHK unter den derzeitigen Umständen nicht bringen, sagt Shimizu:

数日前にドイツの大手政治雑誌ウェブサイトに載っていた「放射性雲が東京方面に移動」のような大見出しは、NHKでは現時点の状況では発表しないと、しみずは言う。


"Denn wenn wir sagen, die Strahlung kommt, dann würden 100 Millionen Leute panisch werden. Deswegen sind wir sehr vorsichtig mit solchen Aussagen."

「我々が放射線がくると言えば、1億人がパニックになるからだ。だから我々はそんな発言には非常に慎重なのだ。」


Doch für diese Vorsicht muss der Sender auch Kritik einstecken. Viele Japaner finden, NHK müsste Tepco und die Regierung schärfer kritisieren.

だが、その慎重さに対し、この放送局は批判も甘受しなければならない。多くの日本人は、NHKは東電と政府をもっと厳しく批判しなければならないのにと思っている。(了)

(以下のコメントは、最初のものを書き換えた。)
ドイツでは、首相や閣僚もメディアからも震災直後から、日本政府や東電からの情報の少なさや矛盾の多さを指摘する声が非常に多い。

特に、ドイツの公共テレビ報道番組の司会者などは、「福島原発についての記者会見で日本政府や東電は毎回言うことが違う!」と、テレビカメラの前で遠慮もなく苛立っていたほどだ。最近は確認していないが、福島原発が爆発を起こした後数日は報道番組の最後の天気予報で、ドイツ国内の天気予報の前に必ず日本地図を出し、福島原発から放射性物質がどのように拡散される可能性があるかシミュレーションした図の説明があった。さらに、原子力専門家の解説も、テレビ・ラジオを問わず報道番組では必ずあったし、今でも状況変化のたびに、複数の専門家へのインタヴューがある。何より驚くのは、ラジオやテレビ局内の科学部にも、原発の構造や日本のエネルギー政策などに精通したジャーナリストが少なからずいることだ。

さらに、この一ヶ月というもの、ドイツに約10ほどある公共放送局のどこかしらの番組で、かなり頻繁に原子力エネルギーをテーマに扱っている。例えば、公共TVの日刊子どもニュースでのわかりやすい解説(HPにも載っている)はもちろんのこと、世界各国を紹介する番組では、他国の原発や核廃棄物貯蔵事情、科学番組では、放射性物質や被曝線量などの解説、討論番組ではドイツのエネルギー政策と脱原発の行方についてといった具合に、とにかくあらゆる方面から現在までわかっている情報や知識、そしてあらゆる立場の人たちの意見を徹底的に伝える姿勢(これは公共放送だけでなくドイツの映像・活字メディア全体にいえる)は、今回の日本の原発震災に限ったことではない。

ドイツでは憲法である「基本法」で国民の知る権利が保障されているため、「情報公開法」など必要なく原則公開、公開できない場合のみ法的根拠を示さねばならない。そして、メディアは第4の権力として政治を監視し、公共の利益のために行動するため、ジャーナリストとしての知る権利を保障されている。

日本では主に記者クラブ制により「言論の自由」が侵されていることは、外国のジャーナリストたちの間でも有名だが、政府と東電だけでなく公共放送でさえ真実を伝えようとしないことは、もはや地球規模の問題として捉えられている現在進行中の原発震災では、事故の早期有効対策や外国との対話すなわち外交上も大きな支障をもたらすに違いない。実際、欧州の原子力専門家たちは事故直後からずっと、メディアからコメントを求められても日本からの情報の不十分さのために十分な見解を述べられずにいる。

ところで、NHKは放射性雲がどちらの方向に
移動中でこれからどう拡散されるのかを、ドイツの公共放送や気象庁のように実際に報道しているのだろうか?少なくとも、上記のインタヴューまでの時点では報道していなかったはずだが・・・。

事実を知ってこそ被害を回避する行動の判断ができる。知らずに被曝してしまったら取り返しがつかない。「パニックを起こしてはならないから報道しない」などと、NHKの報道局長に多くの人々の健康被害を防ぐ手段や機会を奪う権限などないはずだ。そんな報道姿勢の公共放送に、受信料を払う価値などない。

放射性雲とは何か、近づいてきたらどのような行動をとればよいのかなどを、複数の(これが大事!)専門家などにも解説を頼み、住民の立場に立って詳細に報道するべきではないか。少なくとも私の目には、欧州のメディアはそのような報道に努めているようにみえる。

2011年1月20日 (木)

ドイツ民放TVの原発事故ドラマ!!!

2011年1月18日、ドイツの民放TV局SAT1は、「Restrisiko(可能な限りの安全策を講じたあとに残されたリスク)」という原発事故のドラマを放映した。

ドイツのECO-Worldというサイトのニュースによると、370万人がこのドラマを観たという(ドイツの人口は8千数百万人)。

2010年の秋に、ドイツの連邦政府は原発の稼動期間延長、すなわち脱原発の延期を決め、反対する10万人ものデモも起きた(詳細はもう一つのブログ参照)。

SAT1のドラマは、政府が稼動期間延長を決めた古い原発で、GAU(チェルノブイリ事故のような、原発で想定される最大・最悪の事故=炉心溶融)が起き、200万人が避難、ドイツ第2の大都市ハンブルクが無人状態になるという設定で、完全に政府の原子力政策に反対する市民の立場に立った内容といえる。

残念ながら、ドイツ国外では無料のネット視聴を利用できないので、このドラマのあらすじを箇条書きにしてみる。

主人公は、その原発の安全責任者で、二児の母親K。
夫と別居で、子供たちは仕事優先の母に不満気味。

政府が原発稼動延長を正式に決定。湧き上がって喜ぶ従業員たち。

「危険すぎる、稼動を延長するべきではない」と主張するベテランの技術者Aと
所長が激しく言い争う。
技術者Aは密かに、危険であるという証拠のデータを会社のPCから、メモリースティックにコピーして隠す。
誰もいない狭い農道を自転車に乗って帰る途中、Aは不審な車に轢き殺されてしまう。

原発建屋内で火災が発生するが、所長は申告義務を無視するとし、
Kをはじめとする従業員たちも会議で同意。

監視室のオペレーターが、原子炉にアクセスできなくなる。
周辺一帯に緊急避難サイレンを鳴らす非常ボタンを押そうとするKを、
所長は「それを押せば二度と稼動できなくなる!」と遮ろうとするが、
Kはそのまま押して、従業員たちに風上に向かって歩くよう指示。

Aと仲がよかったKは、建設当初からのベテラン技術者Aが遺した書類を調べるうちに、
原発建設当初から構造に欠陥があったことを知る。
そしてAが、その欠陥のために被爆させたという罪悪感から、
地元の病院の小児白血病の子供たちへの支援を続けてきたこともわかる。

GAUが起きた後、Aは無人状態の立ち入り禁止区域に一人乗り込んでいく。
度重なる困難にも、良き理解者だった原発広報コンサルタントの助けがあって、
Aが遺した事故原因の証拠となるメモリースティックを、Aの住居から無事に見つける。
だが、コンサルタントはやがて被曝により死亡。

政府はKの証言により、稼動延長をやめることに決定・・・

ドイツの電力会社は原発でのロケを許可しなかったらしいが、幸い隣国オーストリアは70年代に建設中の原発を廃止しており、撮影はそこで行われた。

ちなみに、SAT1はオーストリアにもあるので、当然ながらこのドラマも放映された。
余談だが、我が家の衛星放送受信機ではドイツのSAT1は見られないため、SAT1の番組はオーストリア版で見ているのだ。ただサッカーの実況中継は、試合する国やチームによってはドイツのSAT1でしか見られないことがあり、息子が嘆いている。

ドイツの有力週刊誌「Der Spiegel」
(WikiLeaksが情報提供した活字メディアの一つとして有名)は昨年9月、原発稼動延長により原子炉圧力容器の下部にひびが生じ大事故につながる危険性を、大学教授が指摘しているという記事を載せた。
溶接箇所への負荷の問題は、オーストリアで70年代に建設中の原発を廃止した理由の一つで、普通のボイラーでも法的に許可されないそうだ。

SAT1は約1時間半(CM込みで2時間)のこのドラマのあと、ドイツの原発は本当に稼動延長をしても安全なのかについて、48分のドキュメンタリー番組を流した。

これは、ネットでも視聴できる(上記リンクより、CM込み)。
ドイツ語なので、途中にたびたび出てくる11名の推進派・反対派へのインタヴューはわからないかもしれないが、
非常に示唆に富んでおり、映像だけでも日本のメディアのドキュメンタリーと比べてみていただきたい。

【主な内容】
★ドイツで稼働中の最古の原発の広報担当者が、取材班を原発内部に案内
(彼は、従業員がいかに厳しい教育・訓練を受けて厳重な安全対策を続けているかを強調、だが一方で「この原発では400件以上の申告義務のあるトラブルが発生」という字幕やナレーションが流れる)
★ドイツの核廃棄物輸送反対デモ
★広島・長崎の原爆投下やネバダの核実験
★ドイツの原発建設ラッシュと若い世代中心の反対デモ
★ハリスバーグやチェルノブイリの原発事故
★ニューヨークの9.11以後ドイツの国会でとりあげられた、原発への航空機テロに対するリスク調査報告など
★専門家は、あと数十年もすれば100%再生可能エネルギーで賄うことが可能になるというのに、なぜわざわざ市民が望まぬ危険な原発稼動延長に踏み切ったのか?
⇒独占状態の4大電力会社の意向のほうを重視する政治

そして、核廃棄物貯蔵施設のあるゴアレーベンに、2001年から国会議員の数だけ立ち並ぶ、石の十字架が映し出される。これは芸術作品だが、脱原発を決めた時の国会議員が将来のために正しい決定をしたかどうか、それぞれの十字架に名前と誕生日が刻まれているそうだ。
最後は、各政党の代表や党首の国会討論の姿が映し出される。



ところで、夜8時15分にドラマから始まったSAT1の特集番組は、3時間経ってもまだ終わらなかった。


続く番組は、「どうすれば電気代を節約できるか」
いろんな家庭の節電の工夫、電力会社の賢い選び方と契約の仕方、太陽パネル設置の際の杜撰な工事経験者への取材等、消費者のための情報が満載だった。

つい最近、ドイツの公共TV番組が、フランスロシアフィンランドの核廃棄物処理事情を報道したばかりで、ドイツのように脱原発を決めている国では、その重要性を裏付ける報道が多い。

日本にはまず、ドイツのように脱原発を選択する有権者がそれを決定できる政権を選ぶことができ、脱原発を延期する政権に対してはここで紹介したような報道で徹底的に反対する市民を代弁するような、民主主義を支えるメディアが存在する必要がある。


まずは、メディアの欠陥や脱原発を公約する政治家の不足を補うために、
以下のような行動に参加しよう!

chateaux1000                              さんのTweetより
「ネットメディアと主権在民を考える会」結成のお知らせ。http://bit.ly/eFXrCR ネットの力を駆使して日本を「主権在民」と「民主主義」の社会に変革する目的の独立個人の組織です。大手マスコミの偏向報道に騙されない「賢明な国民」が1000万人いれば日本は劇的に変わります

☆1/23(日)「エコフェア議員の出番です!2011年統一自治体選挙へ KICK OFF」イベントを開催します。(詳細は「脱原発の日ブログ」

☆もう一つのブログのエントリ⇒「原発反対自治体議員連盟」を応援し大きく育てよう!http://bit.ly/fOBvjz 準備会合には市民サポーターの参加も歓迎。1月28日午後1時30分より 東京都庁議会棟にて・・連絡先はたんぽぽ舎http://www.tanpoposya.net/

2010年9月26日 (日)

ベルギー生活の中の脱原発

「核燃料サイクルは事実上フランスの支配下にある」といわれるベルギーでは、99年に発足したフェルホフスタット連立政権が2002年3月、公約どおりに原発全廃を閣議で決定した。プルサーマルも、残り少ない現在の再処理契約分の終了と共に終焉を迎えることになっている

ベルギーでは、相変わらず国家分裂の危機が高まったり収まったりで、今年の総選挙後も3ヶ月以上経っても未だに新しい連邦政府は生まれる気配がない。

しかし、地方自治が根付いているので、県や地方自治体レベルでは、着々と脱原発に備えた施策が進んでいることが、私の日常生活からも伺える。

まずは電力関連。
今年の6月、グリーン(再生可能)エネルギーを選択できるので2年ほど前に契約先を替えた電力会社から、「弊社のすべてのお客様に100%グリーンエネルギーを供給できるようになりました。これによる電気料金の値上げはありません」という通知が来た。「社用車はすべて電気自動車にしました」というアピールも書かれていた。

Twitterで、日本では約15円/kWhだが、電気料はいくらかという質問があった。
支払い方法などで若干変わるが、1€=120円の場合、約19.6€c(約23.5円)/kWh+消費税21%(配電網使用量や分担金などすべて込)、電気料のみは約0.83€c/kWh+消費税となっている。

請求書には、年に一回、過去の年間電力消費量のグラフを載せてくれるので、とても助かる。節電に努めている家庭の年間消費量はどのくらいかも載っており、毎年それより少なくすることを目標にしている(これまですべて達成!)。

近所の懇意にしているベルギー人夫妻は、最近屋根の太陽光発電を開始して、「メータが逆に回るんだ」と嬉しそうだった。総額1万3千ユーロ(約150万円)のうち4000ユーロくらい補助が出る。15年間売電できて4年後には元が取れるそうだ。期間限定なので、ドイツのように将来買取価格が下がる可能性もあるが、「そうなったら電気自動車を買おうかな」と、売らずに自分たちで使えばいいという。

ドイツ語共同体の政府は、無料のエネルギー相談所も開設しており、暖房器具の買い替えや住居の窓や壁の断熱工事などの相談に乗ってもらえる。断熱工事の材料や工事費、効率の高い新型暖房機器なども、一部所得税免除という形で補助される。


次に、教育。
友人宅で、原爆投下や地震大国日本の海岸には50基以上も原発が建っているなどの話をしていたら、友人の14歳の娘が驚いて、「Die Wolken (邦訳:みえない雲)」という本を貸してくれた。
ベルギーの第二次学校(義務教育は一次6年、二次6年)の8年生で、国語(ドイツ語)教材に使ったという原発事故を題材とした小説だ。チェルノブイリ事故の直後に、ドイツ人作家が出版した。2006年には映画化され、日本語のDVDもある。

<ここで、私の8月8日のTwitterでのつぶやき>
1986年のチェルノブイリ事故直後に書かれた原発事故を題材にした小説が、1996年生まれの少女に読まれ、2006年に映画化された・・・ドイツでは、1998年に脱原発を公約した政権が誕生。今また脱原発延期を目論む政権が窮地に!メディアが過去の教訓を風化させぬ努力を怠らぬおかげだ!

ちなみに、私の子供たちが通う第一次学校でもそうだが、教科書はないので、授業の教材は自治体の学校とそこの教師の裁量で決められる。
息子は、4年生で「点子ちゃんとアントン」、5年生で「ロビンフッド」を読んだ。友人の娘は、7年生のときには麻薬や暴力がテーマの小説を読んだという。これらの小説を教材に、文法や表現、読解力や要約、時代背景などを学ぶのだ。

翻って原発推進一筋の日本では、教育用の副読本「わくわく原子力ランド」とか「原子力ポスターコンクール」といった、教育現場での熱心な洗脳も始まっている。このコンクール
のため、資源エネルギー庁から財)日本原子力文化振興財団へ、昨年1727万2500円の委託費が税金から投入されているそうだ。


政治の話に戻る。
脱原発閣議決定当時のベルギー政府のエネルギー開発庁長官は、環境団体グリーンピースの活動家だった。 若いころは農業技術者だったが、1980年に「緑の党」の創設に参加、1989年から6年間、グリーンピースのベルギー代表として環境や廃棄物問題と取り組んだそうだ。

一方、日本の菅改造内閣大畠章宏経済産業大臣の経歴
「1996
9月、「旧民主党」を結成し、幹事(初代地球市民委員長)として活躍する」とあるが、元は日立の原子力プラント設計の技術者。
就任早々、
海外への原発プラント販売、「交渉窓口」になる意向を表明した。
菅政権では今の路線を止めることは不可能だ。
次回の国政選挙で、原発推進派議員を落選させる以外に道はない。

ドイツでもベルギーでも、社民党や緑の党のように、脱原発を求める有権者の受け皿となる政党が躍進し政権を取ったおかげで実現した。
日本では、少ないながらも民主党や自民党内の脱原発派議員のみを当選させ、社民党やみどりの未来を大きく育てるしか、脱原発の道はないと思う。

選挙前に、立候補者の見極めが重要である。この テーマについては、もう一つのブログで「署名活動について考える」というエントリをお読みいただきたい。

2010年6月14日 (月)

2050年までに100%再生可能エネルギーに移行できる!

現在、米国、中国、欧州を中心に、再生可能エネルギーの開発がかつてないほどの規模とスピードで進んでいる。

なかでも最も大きな割合を占める風力発電では、スペインとドイツを一気に抜き去って米国が1位、中国が2位になった。

とりわけ注目すべき米国のテキサス州は、国別の規模と比べてもスペインに次ぐ風力発電量で、石油生産基地からの脱皮をはかるかもしれない。

さらに欧州に目を向ければ、北アフリカの広大なサハラ砂漠地帯で、前例のない大規模な太陽熱発電を行い、2050年までに全欧州の消費電力の15%を賄うという、総額4000億ユーロ(約45兆円)にのぼる壮大な構想が始まっている。

さて、そんな再生可能エネルギーブームの中で、スタンフォード大教授らによる「2030年までに世界中で再生可能エネルギーを100%にできる!」という 研究報告を、以前当ブログで紹介したが、今年になってEUとドイツで、「2050年までに100%再生可能エネルギーに移行できる」という報告が相次いだ。

一つは、EUの欧州再生可能エネルギー評議会(以下ERECという、欧州における再生可能エネルギー関連の企業・通商団体・研究組織を傘下にもつ統括団体による、「再考2050年(Re-thinking 2050)」(4月14日付)という報告書だ。

ERECは2000
年に設立され、55万人以上の従業員、年間売り上げ700億ユーロの産業界を代表している。

報告書には
EUが彼らの提言を実行し、再生可能エネルギー100%を達成することで得られる環境面、経済面、社会面における利点も挙げている。

例えば、再生可能エネルギー部門では、既存エネルギー部門で失われる雇用を大きく上回る610万人の新規雇用が見込めるという。また、二酸化炭素の排出量を2050年までに90%以上減少できる。さらに、EUが再生可能エネルギーに移行するためには、2050年までに総計2兆8000億ユーロを投入する必要がある一方で、二酸化炭素の排出削減により、総計で3兆8000億ユーロの経済効果があると試算されている。

これらを実現するためにERECが提言した政策内容には、エネルギー市場を完全に自由化すること、化石燃料や原子力エネルギーへの助成金を段階的に廃止し、EU全体の炭素・エネルギー税を導入することなどがある。

もう一つは、5月5日にドイツ政府の「環境問題に関する学識者諮問委員会(以下SRU)」が出した見解、「2050年までに100%再生可能エネルギーで電力供給、気候に負担なく、安全、支払い可能」という報告書である。

SRUは、環境問題を迅速かつ緻密に徹底分析するためには、行政が学術界と常にコンタクトをとる必要があると、1969年に政権交代した内閣によって設置された。自然科学・技術的、経済的、法的、政治学的、倫理的見地から、学術的に中立で包括的な勧告を行なう。現在、ドイツ国内7大学の七人の教授が委員になっている。


SRUに任命された専門家たちが定期的または臨時に公表する中立的な環境状況に関する見解や勧告は、1972年以来、行政当局や報道関係者、一般市民の判断材料としても、広く役立てられてきた。したがって、日本の審議会とは似て非なるものである。


さて、そのSRUだが、再生可能エネルギーへ移行する8通りのシナリオを、欧州で最も厳密で最高のモデルといわれるドイツ航空宇宙センターのモデルを用いて試算している。


それによると、再生可能エネルギーのみのほうが、従来のCO2排出量の少ないエネルギー源とのミックスよりも、電力原価が安くなるという。従来型発電所は、風力・太陽光による発電量の変動に対応できないので、長期的に並行して使うと、システムの効率が下がり不必要に高価になるそうだ。


早急に着手しなければならない課題は、発電施設を結ぶネットワーク構築と、再生可能エネルギーによる変動の大きい電力の蓄電問題の解決である。EU全体でも、再生可能エネルギーを最大限に活用できる電力ネットワークの構築を戦略的に進めているところだ。SRUの提言では、ドイツは蓄電を北欧諸国の水力・揚水発電に依存したほうがよいと、早期の交渉開始を促している。


ということは、日本には水力・揚水発電所が多いので、脱原発という高すぎるハードルさえ超えられれば、ドイツよりも楽に実現可能なはずなのだ。


さらに、SRUはドイツ連邦政府に、「原子力発電所の運転 延長も、CO2分離や貯留できる新しい石炭・褐炭発電所の建設も無用である」と訴えている。現政権が、前政権までの脱原発計画を先延ばししようとしているからだ。


以前のエントリで紹介した、「2030年までに世界中で再生可能エネルギー100%が可能」という報告と、今回紹介した2件の報告に共通しているのは、「技術的には可能である。実現できるかどうかは、政治の意思次第だ」という点だ。

政治の意思とは、すなわち政治を選択する有権者の意思である。

化石燃料資源の枯渇以前に、気候変動による大災害、あるいは地震や人的ミスによるチェルノブイリのような原発事故など、取り返しのつかない事態がいつ起きるとも限らない。
有権者には、政治を選択するために長い間迷っている時間はないのだ。

それでは、日本の政治に目を向けてみよう。

5月14日の衆議院環境委員会で民主党の櫛渕議員が、太陽光発電の世界シェアが大幅に縮小した日本と、大きく伸びたドイツやスペインを比較しながら次のような質問をしていた。

「まさに、官僚主導、再生可能エネルギーの軽視、全量全種の固定価格買い取り制度を導入しなかった、こういったことが本質にあり、日本でも2000年ごろ、民主党をはじめとする超党派で固定価格買い取り制度の導入を進めました。しかし、旧政権はそれを採用しなかった経緯があります」

そして、旧政権の政策の失敗だったと述べた櫛渕議員に、増子経済副大臣も同意した。


それにも関わらず、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度は、相変わらず政策失敗の張本人である経産省中心で検討されており、一年以内に成案を得るなどと気の長い話をしている。導入量目標は、第一次エネルギー供給比で2020年までに10%以上、2050年までが37~46%らしい。

菅政権には、一刻も早くエネルギー政策を経産省から環境省主導に一元化、もしくは英国やデンマークのように新たに「気候変動・エネルギー省」を設立して、国会議員による政治主導で決定するよう改革してもらいたい(当ブログの「エネルギー基本計画」見直しへの意見参照)。


そして、日本のお家芸の技術と人材を活かし、冒頭で述べた世界の再生可能エネルギー推進の流れに、追いつき追い越す包括的な政策を、早急に策定してもらいたい。

2010年4月 5日 (月)

続・2030年までに世界中で再生可能エネルギーを100%にできる!

 

前回のエントリで紹介した、スタンフォード大Jacobson教授らの研究報告の論文(英語)を、斉藤賢爾氏(当ブログの「気候サミットCOP15各国代表の声明」シリーズを、コペンハーゲンからTwitterで実況翻訳してくださった「不思議の国のNEO」の著者)が、Twitterで紹介しコメントを書かれていました。
私自身この論文をまだ読んでいませんが、ドイツの報道になかった内容や斉藤氏の専門的なコメントを是非併せて読んでいただきたいと思い、転載します。

私も、エネルギー需要を減らすことが重要という意見に賛成です。オイルショック後に政府が法律で規制したネオンや広告塔などもさることながら、個人レベルでもまだ節電を工夫できる余地はあると思います。


【論文】

SCIENTIFIC AMERICAN 200911月号の記事
How to get all energy from wind, water and solar power by 2030


Twitterの斉藤氏のコメントから転載】
前提となる需要は?と思って調べたら約17TW11.5TWに下げるようですね。もっと下げましょう!
日本は「1.4kW社会」を目指すべきと思う。ひとり当たりのエネルギー消費が2kW(スイスの目標)よりも1kWに近い社会。現状は約5.5kW
エネルギー安全保障、文明の持続可能性、人類全体に対しての公正さの面で2030年までに風力、太陽光、水力で世界全体のエネルギー需要を賄えるとするこの記事の前提11.5TWは、基本、電化による効率化しか考えていない。
この記事で気になる点は、世界全体のエネルギー消費を現時点で12.5TWとし、16.5TWと見積もる2030年時点での米国の消費を2.8TWとしているところ。これについては、2000年代中頃ですでに世界15TW、米国3.3TWとしている資料も。
エネルギーを風力・水力・太陽光に移行するにあたり、リチウムなどの資源の不足と政治的問題が一番のハードルだと言っていて、それは確かにその通りと思います。資源の不足は物理的な問題なので解決し難く、やはりエネルギー需要を減らすことが重要。
「石炭+炭素回収・貯蔵」や「原子力」を石油の代替として「考慮していない」のは、全体でのCO2排出やその他の大気・土壌・海洋汚染に加えて「テロリ ズム」のリスクを考えているから。普通は考えますよね。安全で安心できる社会を作りたいなら。【転載ここまで】

2010年4月 3日 (土)

2030年までに世界中で再生可能エネルギーを100%にできる!

エイプリルフールはもう過ぎたので、タイトルを信用してください。
少なくとも、スタンフォード大学のJacobson教授たちは、ベルリンで技術的に可能であると報告したのです。

報告内容の前に、ドイツの首都ベルリンで3月に開かれた、「ドイツ・アメリカ エネルギーの日」という、新しいエネルギーのあらゆる側面を網羅した会議について、少し触れておきたいと思います。

この会議で独米商工会議所は、米政府はエネルギー効率化や再生エネルギー促進に700億ドルを用意する見通しなので、ドイツ企業がアメリカで投資するには今が好都合だとアピールしました。

ところで、アメリカと中国との間には、省エネルギー技術、再生可能エネルギー、電気自動車、スマートグリッドなど、中国のエネルギー政策の変革に必要なすべての主要分野において、中長期的に相互協力を行うという、戦略的な協定がすでにあるそうです。どうやら、日本はすっかり出遅れたようです。

そして今度は、50以上の国の手本となった法令を定め、多くの雇用を生み出し、再生可能エネルギー技術の分野ではトップランナーといえるドイツの企業を誘致しようとは、アメリカはなかなかしたたかです。

一方日本の経済界やメディアは、鳩山政権の野心的な25%削減宣言に対して、経済に悪影響を及ぼすとか国民負担が増えるとか、アメリカや中国が削減しないのに不公平とか、反対意見のオンパレードで、建設的な議論はみられません。
しかも、経産省の審議会が「エネルギー基本計画」を見直すからと2回目の意見募集をしていますが、温暖化防止には問題だらけの原子力発電を増やすしかないというような、旧態依然の審議会のようなやり方で旧態依然の利権を温存する政策内容しか出てきません。

原発の問題については書き出すときりがないので、もう一つのブログ「原子力エネルギー問題に関する情報」をご覧ください。

日本政府がいつまでもモタモタしている間に、削減目標こそは日本に見劣りするものの、アメリカと中国の政府は着々と将来に向けてエネルギー政策の変革を進めているのです。

鳩山政権は、公約どおりの政治主導で
もっと大胆に、欧州のような化石燃料に依存せず持続可能なエネルギー社会に変革するための、包括的な「気候変動・エネルギー政策」を策定し、専属で取り組む行政機関として新たな省庁を設置するべきです。ドイツのように環境省主導にすると、これまで長年温暖化ガス削減の足を引っ張ってきた経産省との縄張り争いに終始して進歩がないので、英国やデンマークのような「気候変動・エネルギー省」を作るべきでしょう。

閑話休題。
ベルリンで開かれた独米エネルギー会議では、Energy Watch Groupによる研究報告もありました。
これが、冒頭の「2030年までに世界中で再生可能エネルギーを100%にできる!」という、
Mark Z. Jacobsonと、Mark A DeLucciという二人の教授による発表です。

ドイツでは、4分の3の人々が、電力はすべて再生可能エネルギーで供給してほしいと願っている一方で、半数は技術的に実現可能か懐疑的だそうですが、Jacobson教授らは技術的には可能というのです。

<内容の概略>
風力(波力も含める)、水力(潮流や地熱も含める)、太陽光による発電を柱とし、今日すでに普及あるいは技術的に完成したもので、原料調達、建造、施設の閉鎖などあらゆる段階において、温暖化ガスや有害物質が最小限しか放出されないことが前提。
したがって、原子力発電、バイオ燃料発電は考慮に入れない。

20年間に100兆ドルくらい投資することになるが、化石燃料や原子力発電所の建設費、燃料費、健康・環境安全対策(私は、この対策がこれまで蔑ろにされてきたので、本気でやればはるかに高くなると思います)に最低限かかる費用も同程度。

電池に使うリチウムなど、特殊な稀少原料不足がネックになるかもしれないが、リサイクルや技術革新によって乗り越えられるだろう。


越えねばならない壁は、従来のエネルギー供給側の利権を手放したくないロビイである。
立法者(すなわち国会議員)は、再生可能エネルギーの普及を促すための法令、コスト削減への誘導策、従来のエネルギーに対する補助金削減などにより、ロビイストの影響(というより抵抗でしょう)を克服しなければならない。



そして、この報告にあるようにロビイストの影響を克服するために、ピークオイルを過ぎて持続可能なエネルギー政策に必要な経済利益にとらわれぬ科学的な情報を広く提供する必要があると、欧州の国会議員と世界中の専門家たちが2006年に設立したのが、Energy Watch Group
(英語)です。

発起人は、ドイツの国会議員で
緑の党のエネルギー・技術政策担当Hans-Josef Fell議員。 他の国会議員は、ドイツ社会民主党の環境政策担当、スイスの経済学者、イギリスの全党ピークオイルグループの議長です。

さらに、欧州以外に中国や韓国からも専門家が約20名参加しています。

このような活動を通じて、真に有用な情報が多くの国々に広まっていくことを願ってやみません。

そのために、私たちにまずできることは、このEnergy Watch Groupを設立し活動しているような国会議員を、日本でも1人でも多く選んで国会に送り込むことです。