ドイツでBio(有機認証)卵からダイオキシン!
【追記】このエントリは、2010年5月のダイオキシン・スキャンダルに関する記事で、2011年1月に発生した事件ではありません。
いまやドイツの格安スーパーのどこにでも、Bio(有機認証済)の野菜、果物、乳製品、肉類、麺類、お菓子などがかなりの種類揃っている。価格も農薬散布品に比べてそれほど割高ではなくなったし、どのスーパーでも価格にあまり差はない。
だから、普段はわりと近くて互いに隣接しているAとLで買い物をするが、時々は気分転換に別のスーパーの製品も買うことにしている。
で、よりにもよって先週の7日、たまにしか行かないスーパーPでBioの卵も買ってしまったのだ!
翌日、ニュースでダイオキシン・スキャンダルの発生を知った。
私が買い物をするドイツのNRW(ノォトラインヴェストファーレン)州で、オランダの企業が養鶏場に売った飼料にダイオキシンが混入しており、Bioの卵からダイオキシンが検出されたというのだ。冬の間、ウクライナから買ったトウモロコシが汚染されていたらしい。その後、問題の飼料が出回った少なくとも9つの連邦州で該当する養鶏場が閉鎖されたという。冬の間ということは、汚染卵はもうすでにかなり長い期間、出回っていたかもしれない・・・。
7日の記事には、NRW州で閉鎖された養鶏場からBio卵を仕入れていたスーパーはLとRとあり、両店ともBio卵を店頭から回収したそうだ。
ショック!私が卵を買ったPは、Rの子会社だ。Bio製品には同じブランド名が使われている。なのに、Rが遅くとも6日までには店頭から回収したはずのBio卵を、なぜ私は7日にPで買えたのだろう?
もちろん、「RとPには別々の養鶏場から仕入れており、Pの卵は問題がなかった」という可能性はある。だが、詳細な情報がない中で化学物質過敏症の私としては、万一買った卵が“クロ”だったらたまったものではないと、だんだん疑惑が募ってきた。
どうしようかと思い悩みながら、ドイツ語の「ダイオキシン、Bio卵、P」で検索してみたら、悩み相談のチャットのようなサイトがあった。
ふむふむ、「私だったら、3ユーロもしないんだから、心配だったら捨てるね」という意見が結構ある。「当局が食べても健康に影響しないと発表してるから食べる。ただでさえ、他の食品から化学合成添加物をいっぱい体内に取り込んでるんだから、たいしたことない」という意見も。う~む・・・。
書き込みをどんどんスクロールしていったら、ついに知りたい情報があった!
「近所のスーパーP(NRW州)に持っていって返品した。お店の人も事情はわかってたから、すぐに代金を返してくれた。それで、今度はBioでない卵を買ってきた」。
そうだ、 私も返品しに行こうっと! 幸いまだ一つも使ってないし、レシートも残ってる。
さて、スーパーPに着いたら、一つしかレジが開いておらず長蛇の列。非難の眼差しの中で、「すみません、返品したいんですが、列に並ばなきゃいけません?」とレジの女性に聞いてみた。「じゃ、呼び鈴で同僚を呼びます」
「ありがとう!」
・・・で、間もなく出てきた上司らしい男性との、押し問答が始まったのだ。
「この卵、返品します。ダイオキシンの記事を読んだので」
「記事? あんなの単にパニックを煽ってるだけだよ。大丈夫、問題ないって。僕だったら食べるよ。それに、どうせ他所の州の話なんだから」
「まさか! NRW州で最初に見つかったんでしょ。それで、スーパーのLとRが店頭から回収したっていうから。私が買った日がちょうど記事の日付だったので、心配になって」
「この店のは大丈夫だよ!NRW州っていっても広くて店がたくさんあるんだから。見てごらん、この箱の面に3箇所も認証のマークが安全だってついてるじゃない」
「でも、その認証マークがついて店舗まで届いた後に、スキャンダル発覚で売るのをやめたのだから、そのマークを信じろといっても無理でしょう」
「うちの店のは大丈夫って言ってるでしょう!」
「でも、あなたがそう言ったからって保証にはならないでしょう。この店舗の卵はダイオキシンに汚染されていませんという文書があるならください」
(昔ドイツ留学中に苦い経験から学んだ、口約束は絶対だめ!後で証明できるように必ず書いてもらうこと!という、ドイツ生活での金科玉条なのだ!)」
「保証っていうけど、今の世の中、誰も何も保証なんてできるわけないんだよ。Bioっていっても、この大気汚染の中で育つんだから・・・」
「とにかく、文書がないなら卵は返品します」
「いいよ、別に返品することは問題じゃないんだから。買い物が終わってレジで清算すればいいよ。僕が知ってるからってレジでそう言って」
やれやれ・・・とやっと買い物を始めてBioのバナナを買おうとした時、また彼がやってきて余計な一言。
「あの卵を食べられないっていうんなら、そのBioのバナナなんて買えないよ!外国から輸入してて誰も保証なんてできないんだから!」
なんというしつこさ!
返品を認めたら、ダイオキシン汚染を認めることになると思ったのかしら?
ともあれ、何の因果かドイツに限らずベルギーでも、私はダイオキシン情報には振り回されてばかりだ。
数年前、ニワトリをたくさん家の周りで放し飼いにしている近所の農家で卵を買っていた時期がある。だが、「土壌がダイオキシンで汚染されている。個人の農家から買うと定期的な検査を受けていないから、検査を通過したスーパーなどの店舗で買うほうが無難」という報道のため断念。ちょうどドイツのスーパーでBioの製品が出回り始め、卵の価格も農家とそれほど違わないので、乗り換えたのだった。
もっと遡って10数年前、息子を妊娠中にベルギーでダイオキシン・スキャンダルが発生し、食料品店やスーパーの棚から、肉類・卵・乳製品が一斉になくなったことがあった。
今でこそベルギーの安いスーパーにもBio製品があるが、当時は高級なスーパーのチェーン店にしかなかった。それでも、お腹の子どもの健康のためにと投資しており、Bio食品のコーナーだけには卵や乳製品が並んでいてホッとしたことを覚えている。肉類は、産婦人科医の助言でほとんど食べていなかった。
しかし、今回は逆だ。よりによって、Bioの卵が汚染されたのだ!
ウクライナからオランダ企業を介してドイツの生産者へというような経路が複雑になるほど、規制の抜け穴が増える可能性が高まるだろう。
安全・安心な食品を確保するには、前途多難な時代だとつくづく思う。
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