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2010年6月14日 (月)

2050年までに100%再生可能エネルギーに移行できる!

現在、米国、中国、欧州を中心に、再生可能エネルギーの開発がかつてないほどの規模とスピードで進んでいる。

なかでも最も大きな割合を占める風力発電では、スペインとドイツを一気に抜き去って米国が1位、中国が2位になった。

とりわけ注目すべき米国のテキサス州は、国別の規模と比べてもスペインに次ぐ風力発電量で、石油生産基地からの脱皮をはかるかもしれない。

さらに欧州に目を向ければ、北アフリカの広大なサハラ砂漠地帯で、前例のない大規模な太陽熱発電を行い、2050年までに全欧州の消費電力の15%を賄うという、総額4000億ユーロ(約45兆円)にのぼる壮大な構想が始まっている。

さて、そんな再生可能エネルギーブームの中で、スタンフォード大教授らによる「2030年までに世界中で再生可能エネルギーを100%にできる!」という 研究報告を、以前当ブログで紹介したが、今年になってEUとドイツで、「2050年までに100%再生可能エネルギーに移行できる」という報告が相次いだ。

一つは、EUの欧州再生可能エネルギー評議会(以下ERECという、欧州における再生可能エネルギー関連の企業・通商団体・研究組織を傘下にもつ統括団体による、「再考2050年(Re-thinking 2050)」(4月14日付)という報告書だ。

ERECは2000
年に設立され、55万人以上の従業員、年間売り上げ700億ユーロの産業界を代表している。

報告書には
EUが彼らの提言を実行し、再生可能エネルギー100%を達成することで得られる環境面、経済面、社会面における利点も挙げている。

例えば、再生可能エネルギー部門では、既存エネルギー部門で失われる雇用を大きく上回る610万人の新規雇用が見込めるという。また、二酸化炭素の排出量を2050年までに90%以上減少できる。さらに、EUが再生可能エネルギーに移行するためには、2050年までに総計2兆8000億ユーロを投入する必要がある一方で、二酸化炭素の排出削減により、総計で3兆8000億ユーロの経済効果があると試算されている。

これらを実現するためにERECが提言した政策内容には、エネルギー市場を完全に自由化すること、化石燃料や原子力エネルギーへの助成金を段階的に廃止し、EU全体の炭素・エネルギー税を導入することなどがある。

もう一つは、5月5日にドイツ政府の「環境問題に関する学識者諮問委員会(以下SRU)」が出した見解、「2050年までに100%再生可能エネルギーで電力供給、気候に負担なく、安全、支払い可能」という報告書である。

SRUは、環境問題を迅速かつ緻密に徹底分析するためには、行政が学術界と常にコンタクトをとる必要があると、1969年に政権交代した内閣によって設置された。自然科学・技術的、経済的、法的、政治学的、倫理的見地から、学術的に中立で包括的な勧告を行なう。現在、ドイツ国内7大学の七人の教授が委員になっている。


SRUに任命された専門家たちが定期的または臨時に公表する中立的な環境状況に関する見解や勧告は、1972年以来、行政当局や報道関係者、一般市民の判断材料としても、広く役立てられてきた。したがって、日本の審議会とは似て非なるものである。


さて、そのSRUだが、再生可能エネルギーへ移行する8通りのシナリオを、欧州で最も厳密で最高のモデルといわれるドイツ航空宇宙センターのモデルを用いて試算している。


それによると、再生可能エネルギーのみのほうが、従来のCO2排出量の少ないエネルギー源とのミックスよりも、電力原価が安くなるという。従来型発電所は、風力・太陽光による発電量の変動に対応できないので、長期的に並行して使うと、システムの効率が下がり不必要に高価になるそうだ。


早急に着手しなければならない課題は、発電施設を結ぶネットワーク構築と、再生可能エネルギーによる変動の大きい電力の蓄電問題の解決である。EU全体でも、再生可能エネルギーを最大限に活用できる電力ネットワークの構築を戦略的に進めているところだ。SRUの提言では、ドイツは蓄電を北欧諸国の水力・揚水発電に依存したほうがよいと、早期の交渉開始を促している。


ということは、日本には水力・揚水発電所が多いので、脱原発という高すぎるハードルさえ超えられれば、ドイツよりも楽に実現可能なはずなのだ。


さらに、SRUはドイツ連邦政府に、「原子力発電所の運転 延長も、CO2分離や貯留できる新しい石炭・褐炭発電所の建設も無用である」と訴えている。現政権が、前政権までの脱原発計画を先延ばししようとしているからだ。


以前のエントリで紹介した、「2030年までに世界中で再生可能エネルギー100%が可能」という報告と、今回紹介した2件の報告に共通しているのは、「技術的には可能である。実現できるかどうかは、政治の意思次第だ」という点だ。

政治の意思とは、すなわち政治を選択する有権者の意思である。

化石燃料資源の枯渇以前に、気候変動による大災害、あるいは地震や人的ミスによるチェルノブイリのような原発事故など、取り返しのつかない事態がいつ起きるとも限らない。
有権者には、政治を選択するために長い間迷っている時間はないのだ。

それでは、日本の政治に目を向けてみよう。

5月14日の衆議院環境委員会で民主党の櫛渕議員が、太陽光発電の世界シェアが大幅に縮小した日本と、大きく伸びたドイツやスペインを比較しながら次のような質問をしていた。

「まさに、官僚主導、再生可能エネルギーの軽視、全量全種の固定価格買い取り制度を導入しなかった、こういったことが本質にあり、日本でも2000年ごろ、民主党をはじめとする超党派で固定価格買い取り制度の導入を進めました。しかし、旧政権はそれを採用しなかった経緯があります」

そして、旧政権の政策の失敗だったと述べた櫛渕議員に、増子経済副大臣も同意した。


それにも関わらず、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度は、相変わらず政策失敗の張本人である経産省中心で検討されており、一年以内に成案を得るなどと気の長い話をしている。導入量目標は、第一次エネルギー供給比で2020年までに10%以上、2050年までが37~46%らしい。

菅政権には、一刻も早くエネルギー政策を経産省から環境省主導に一元化、もしくは英国やデンマークのように新たに「気候変動・エネルギー省」を設立して、国会議員による政治主導で決定するよう改革してもらいたい(当ブログの「エネルギー基本計画」見直しへの意見参照)。


そして、日本のお家芸の技術と人材を活かし、冒頭で述べた世界の再生可能エネルギー推進の流れに、追いつき追い越す包括的な政策を、早急に策定してもらいたい。

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コメント

初めまして

2050年まで再生可能エネルギー100%ってステキですね

しかし、風力エネルギーに関しては様々なクリアーし

なければならない課題がとても多いのです

第一が自然、環境に優しくない↓

http://www.d1.dion.ne.jp/~akaki_ch/windfarm.html

人間の知恵で自然、環境と共生できるものにしていかな

ければならないと思います

はじめまして。ぼくは 芦浜原発に反対

していたものです。

今、アメブロの掲示板、アメばた会議に

スレッドをたて論争しています。  

もし 宜しければ、応援コメントお願いし

ます。タイトルは、 (以下)

「原発は早急に全面停止させるべき」

、、、です。

何しろ無学な僕のコーナーなので

誤りも多いと思いますが

宜しくお願いします。

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