気候サミットCOP15各国代表の声明 -第1弾
COP15は、当初の大方の予想通り、実りのない結末を迎えました。ドイツの左派でグリーンなベルリンの新聞tazの見出し「ミニ成果のメガサミット」が的を得ているでしょう。しかし、世界レベルでの気候変動への取り組みは、これからもずっと続きます。
今回のコペンハーゲンでの気候サミットの失敗を繰り返さないため、世界の市民はこれから何をするべきでしょうか。
私は、ドイツで環境学を学んでみて、環境先進国といわれる国々とそうでない国々の違いの一つは、いかに多くの世界の現状を伝える情報を、国民が共有しているかにあると気づきました。これまでのエントリで、環境省や公共放送のCOP15に関する情報提供の仕方が日独で大きく異なることを紹介したのも、折りあるごとにドイツの公共放送からの情報をブログに書くのもそのためです。日本のジャーナリズムが、せめてドイツ並みに環境政策に関する豊富な情報を提供するようになることを願いつつ、この姿勢はこれからもずっと続けていくつもりです。
ところで、世界のリーダーたちが、近い将来人間の生存が脅かされかねない気候変動をなんとか食い止めようと集まったはずのサミットですが、世界で公共放送のテレビやラジオで実況中継した国があったでしょうか。少なくとも自国の国会中継をするくらいの重要度はあると思います。しかし、現状は外国である英国王室の結婚式の模様は数時間にわたってテレビ中継しても、自国も関わる地球サミットの模様は中継しない・・・それはおそらく情報の送り手よりも受け手のほうに原因があるのでしょう。見たい・聴きたいという人がいないから、中継されないのです。そして、中継されないから見たい・聴きたいという人が増えないという悪循環・・・
各国の元首や大臣が、超多忙な日程をぬってコペンハーゲンまで駆けつけ、ろくに眠る時間もないようなスケジュールの中で懸命に訴えた声明を、果たして鳩山首相やドイツのメァケル首相、オバマ大統領をはじめとする参加国のリーダーたちは、その内容をすべて聴くか読むかしたのでしょうか。世界中のいったいどれほどの市民が、すべての声明の内容を目に耳にしたでしょうか。
気候サミットの会議の内容を聴きたい(読みたい)という日本人のために、コペンハーゲンからTwitterで実況翻訳してくださった方がいます。斉藤賢爾氏(Web:http://www.accianco.jp/)の並々ならぬ尽力に心から敬意を表し、これからもっとCOP15の内容を読みたいという方が増えることを祈りつつ、Twitterの各国代表による声明の部分を、当ブログで紹介します。
斉藤氏は、翻訳の正しさは保証していないという但し書き付で転載を快諾してくださいましたので、改めて御礼を申し上げます。また、会議中音声が途切れた場合などもあり、完全ではないこともご承知おきください。
前置きが長くなりましたが、今回はまず、グループの代表の声明です。
議長「「我々はひとつの惑星の上におり、これを一緒に進めて行くのです。グループを代表するリーダーたちの声明を聞きましょう」(順不同)
オーストラリア気候変動および治水担当大臣 Ms. Penny Y. Wong (日本を含む傘グループを代表して)
「50% 削減が必要と考えます。2020年以降の枠組みでは、インパクトのある資金援助を。途上国での緩和と適応の支援のために。低炭素の未来へ。透明性は基本です。今後 2-3日で締結する必要があります。世界は京都議定書、協定、バリ行動計画を持っていますが、コペンハーゲンでは、それ以上のものが必要です」
セネガル大統領 Mr. Abdoulaye Wade
「私は、混乱しています。会議からの報告が、途上国を支援する目的に沿っている、しかし、適応のための資金の話がずっと下にリストされている。私の視点では、重要な問題は上の方にリストされている。先進国の削減のコミットメントです。資金の話をするのは適切か分かりません。なぜなら約束は破られるからです。京都議定書はポジティブなポイントを持ちます。アフリカは海岸線が上昇し、土地が減っています。サハラの砂漠は拡大しています。しかしみなさんと同じ波長にならないのかも知れない。約束が果たされると思えないからです。しかし、アフリカの西側の海岸が、海に押されているわけですよ。そして塩分が土地を侵食します。飲料水がしょっぱくなっているんですよ。それで、科学者の意見を聞いて、壁を作りました。もうひとつの我々の経験は、エコビレッジです。村落を、太陽光発電で自給自足できる場所に変えます。6つのパイロットプロジェクトへの資金を受けました。雨期の水を、失われている水を活用するプロジェクト。フランスに感謝します。軍隊を送って協力してくれた。我々は、待ちたくないのです。科学者が、アフリカでの解決策を提案するのを歓迎します。アフリカのフリーなエネルギー。我々は野心的なのです。サハラに100GW の太陽光発電施設を。太陽はアフリカの資源です。事実上、アフリカにとってフリーなエネルギーです。アフリカ大陸が開発できる。新しい文明です。無制限のエネルギー供給です」 (斎藤氏注: 日本の総電力は 300GW くらいです)
スウェーデン環境大臣 Mr. Andreas Carlgren (EU を代表して)
「ストックホルムでは、インディラ・ガンジーが問いかけました。貧困は、環境の劣化の原因であり帰結なのです。我々は、まだ、飢餓と疫病、貧困の問題に答えを出せていません。気候変動の課題を解かなければありえないのです。ガンジーの問いに、今、答えましょう。なんの責任も問えない、最も貧しい人々が、最もひどい被害を被っています。化石燃料を用いない経済を作るためのこの唯一の機会を活用しましょう。コペンハーゲンは、ただのチェックポイントではありません。ブレイクスルーの機会なのです。野心的で、地球規模で、完全な合意に達するまで、コペンハーゲンの地を出ないことを誓いましょう。EU は 1990年比で 95% の削減を目指します。新興国も、削減を行う必要があります。すべての排出源を明らかにする必要があります。2030年までに森林縮小に依る排出をゼロに。科学は進歩します。新しい科学の成果を採り入れるためのレビューの期間が必要です。EU は 2013年まで待たずに資金を提供します。京都議定書を救うために努力しました。EU は、京都議定書のターゲットを超えて努力できるのです。しかし議定書だけでは不十分です。より包括的な、高いターゲットの、法的拘束力のある合意が必要です。我々は、みなさんがターゲットを上げるためにプレッシャーをかけます。アメリカと中国、あなたがたは半分の排出の責任があります。あなたがたの削減能力が鍵なのです。あなたがたにはより多くを狙う能力があります。世界が2℃以下の上昇になるように!世界をひとつにしましょう。互いの目を見て、我々は一緒に、この美しい惑星の市民として、成果を出しましょう」
レソト首相 Mr. Pakalitha Bethuel Mosisili (最も発展途上の国々を代表して)
「この惑星での気候変動の影響に立ち向かうため、我々は、今日、ここに集まりました。新しい病気が生まれており、海岸線が変わり、島々が消えつつあります。土地が疲弊し、生物の多様性が失われています。気候変動は人類全体に影響しますが、我々、最も発展途上な国々には、それに対応する能力が不足しています。この歴史的な COP で、客観的な科学の結果に基づき、挑戦をする必要があります。2トラックの交渉の報告を検討し、第1コミットメントの終了後の枠組みを。先進国の今後の削減は 1990年比で 2020年まてに 45%、2050年までに 55% が必要で、1.5℃以下の上昇に抑え、CO2 濃度を 350ppm 未満に抑えなければなりません。京都議定書を尊重し、新たな議定書は受け容れられません。発展国での緩和の努力を。資金が必要です。適応も、我々は NAPAS というプログラムを始めましたが、資金が必要です。技術と資金、能力育成。資金のスケールアップが必要です。ODA の外側に、確約されるものが必要です。我々は、先祖からこの惑星を譲り受けました。政治的な意志をもって、将来の世代のために、それを保存しましょう」
グレナダ首相 Mr. Tillman Thomas (AOSISを代表して)
「すべての国々がひとつの課題に共通して取り組むのは珍しいことです。世界のすべてが、島々を含めて、共通の課題に解決を与えようとしています。歴史的な責任が、我々にはあります。世界とその未来が、我々に依存しています。我々、小さな島々は、気候変動の影響をすでに受けています。2年前にバリで始まった作業が、ここで実を結ぶはずです。京都議定書と協定の両方が、果実を結びますように。温室効果ガスの緊急な削減が必要であり、1.5℃以下の上昇に抑える必要があります。既に起きているインパクトに適応し、将来に備えるため、AOSIS の仲間達は、すでに移動を始めています。全員のコミットを。この唯一の機会を、人々の努力を成果に結びつけましょう。どの島も取り残されないように、1.5℃以下を」
エチオピア首相 Mr. Meles Zenawi (アフリカ・グループを代表して)
「温暖化は起きています。脅威はリアルです。科学がその原因を究明しています。これが、我々が危機を回避する最後のチャンスであるというのは言い過ぎではありません。この課題が、全員の協力で解決できるなら、今世紀に起きるだろう他のどの課題も解決できるでしょう。人類の生存が掛かっているのです。アフリカは、ひとつの声になり、ひとつの交渉団を作ることにしました。エチオピアはその代表です。私の国だけでなく、アフリカを代表して、気候変動の悪影響は、将来起きません。今、起きているからです。先進国の炭素指向の文明のためですが、我々はここに被害者として来ているのではありません。公平な未来を実現に来ました。アフリカは、どんなシナリオにおいても、将来、汚染者にはなり得ません。わが国を例にすると、倍々の成長を続け、2025年には大国になります。しかし、その実現のために炭素ニュートラルな開発を進めます。みなさんに言いたい。ギャップを埋めましょう。新しい状況に適応しましょう。資金援助に対しては初期・長期的に具体的な提案があります。アフリカに与えられた基金はアフリカの銀行により管理します。排出権取引や炭素税を資金源とします。完全な補償を求めるアフリカの一部の参加国は落胆するかも知れません。しかし合意がなければ失います。アフリカは、他の地域よりも失うものが大きいからこそ、柔軟に対応しなければなりません。空の作業は受け容れられません。コペンハーゲンで合意を。これは、苦しんできたアフリカの約束です」
スーダン副大統領 Mr. Nafie Ali Nafie (G-77 と中国を代表して)
「おはようございます。G-77 と中国を代表して申し上げます。2年前、バリですべての参加国が、AWG-KP に合意しました。2トラックの交渉プロセスを立てました。AWG-KP は京都議定書の第2コミットメント期間を焦点とする作業グループです。2012年以降、先進国が、気候変動のインパクトを最小化するために、新たな排出制限を議論するものでした。しかし、遅延が起きました。デッドラインを満たすことができませんでした。先進国のこの試みは、平等さに対する脅威です。2トラックの成果を保持し、京都議定書を基本的な道具として、先進国がコミットすることを望みます。G-77 と中国は、京都議定書の第2コミットメント期間が2012年以降、有効に働くことを期待し、京都議定書を冗長にするような試みを支持しません。COP15 で合意があることを期待して進めてきました。しかし、我々の意図は、複雑な、何層にもわたるコンサルテーションによって、うまく働きませんでした。意味のある結論を生むためには、透明性に欠けます。G-77 の多くの参加国は、キャパシティが小さく、すべてのミーティングに出られません。そんな中、早朝まで頑張ってきました。しかし、その成果が無にされようとしている。京都議定書が無にされたりするようなことのないよう、科学に基づき、平等に、責任を持って。過去と現在のそれぞれの責任を全うし、排出を減らすよう、問題を緩和するよう、技術を移転し、能力を育成するよう、途上国の開発と生存の自由を保証し、現在と未来の世代のために。途上国の、緊急および長期的なニーズを満たす資金を。バリ行動計画に則る作業が止まっています。十分な緩和対策がとられない限り、コペンハーゲンは成功とは言えません。すべての部品を。G-77と中国は、ボトムアップの、参加国が駆動する方式を支持します。合意には、大きなプレッシャーがあると思います。我々のグループは、合意にコミットしています。しかし、いくつかの重大な問題があります。G-77 と中国は議長を支援する準備があります」(第二弾に続く)

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