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2009年12月26日 (土)

コペンハーゲンCOP15各国の声明  -雑感

世界100カ国以上の国家元首・閣僚の声明内容を読んだのは初めてでしたが、人柄がにじみでた名演説も少なくありませんでした。学校での地球温暖化に関する授業では、このような世界会議での生の演説を読ませるべきだと思います。

声明では、小さな国で気候変動の影響を大きく受けつつある国ほど、「一つの惑星」「子どもたちの未来」「将来の世代への責任」「人類の生存」といった言葉を多く使っていたようです。

彼らの危機感を共有するためには、かの国々の現状をもっと知らねばなりません。私が新聞社の社長だったら、演説をすべて号外として印刷し、NHKの会長だったら、実況中継が無理でも、毎日15分ずつ通訳つきで各国の声明を放送したいところです。環境先進国ドイツでさえさすがにそこまではしませんでしたが、それでも連日、ニュースは朝から晩までまずCOP15で始まり、活字も映像もメディアは多くの特集を組みました。

ドイツでは、メディアがそうした情報を極力多く提供しようと努めていることは、以前のエントリでドイツの公共放送や新聞の特集画面を紹介したのでわかると思います。もっとも、ドイツの国自身、アルプスの氷河の融ける速度が予想以上に速くなっており、氷河がなくなったらライン川の水が激減するとか、毎年のように暴風や洪水の被害が発生しているとか、途上国の現状を知るまでもなく十分危機感はもっています。

一方、せっかく鳩山政権が高い削減目標を掲げたのに、日本では世界の気候変動に関する情報が少なすぎます。その代わり、「エコ亡国-地球のために日本を潰すな」(日経ビジネスオンライン)のような見出しに代表されるように、一世帯当たりの負担額が増えるとか削減にかかるコストが他の国より多くて不公平とか、なんとか削減目標値を低くしようとする大合唱ばかりが目立ちます。

岡田外相がこのような論調に対して、「今回(COP15で)合意ができなくて良かったと、胸をなで下ろす向きも国内にはありますが、これは決してそうではありません。やはり、しっかりと温暖化対策を世界で協調してやっていくということが、次の世代に対する責任を果たすことになります」と釘をさしていますが、まだまだ鳩山内閣の気候変動政策は手ぬるいと思います。これについては、またいつか詳しくふれます。

さて、COP15が終わった数日後、EUでは環境相の会議が開かれ、ドイツの環境大臣が、EUと考えの近い国々と同盟を結んで歩調を合わせていくべきだと提案しました。そこで挙がった国の名が、オーストラリア、韓国、日本です。では、これらの国々の声明を再現してみましょう。

日本環境相 Mr. Sakihito Ozawa
「枠組みに合意しに来ました。この合意は、すべての主たる排出国が、責任を果たすものです。この目的のために、日本は 2020年までに 25% の削減を明言しました。公正で有効な 2012年以降の枠組みを、野心的なターゲットに則って作りましょう。昨日、鳩山イニシアティブのもとで、2012年まで150億ドルの支援をすることを決めました。2012年以降も、資金を確保して行く所存です。2010年、日本は、COP10 - 生物多様性の会議をホストします」

韓国大統領 Mr. Myung-bak Lee
60億人が見ています。落胆させることはできません。ともに行動しましょう。我々は、自発的に、国際社会で認められた最も高いターゲットを目指します。気候変動に対しては、我々は迅速な動きをします。どのように温室効果ガスを削減しますか。"どのように" です。"どのくらい" も大事ですが、むしろ "どのように" 我々は排出を削減し、同時に我々の経済を維持するのか。より多くの職を作り出すのか。それが大切です。我々の GGGI は国際的シンクタンクとして貢献します」

オーストラリア首相 Mr. Kevin M.Rudd
「この世紀の歴史が書かれるとき、この会議にはひとつの章が割り当てられるべきでしょう。国粋主義にとらわれていた過去を離れ、未来への共通の取り組みを始めるのです。この責任を果たし、人類の様々な物語の中において、こどもたちへ、孫たちへと語り継ぐのです。これは偶然の集まりではありません。科学が私たちの前に提示した現実を見ましょう。先進国は、温室効果ガスの蓄積に対して歴史的な責任を持ちます。この惑星がいま、抱えている問題に対して私たちが取り組まないとしたら不正なことです。2050年には 3.24、あるいはそれ以上の気温上昇が起こります。残り少ない時間の中で何を行うべきなのでしょう。100万の言葉が費やされました。しかし、語るのは止めて、仕事を始めるときです。ペンを置いて、我々の間の違いを埋めるときです。5Gt の削減を行うときです。今後3年の資金援助の合意はもうできています。その次に続く7年間も。コミットメントするのか、しないのか。決断のときです。論点はあります。現在のドラフトには 102個のブラケットがあります。そこを議論しなければならない。行動しないという決断が勝ることを恐れています。帰結は莫大なものになります。ツバルが沈むかも知れない。チベット高原の氷が溶けるかも知れない。アフリカの農地が破壊されるかも知れない。グレートバリアリーフが無くなるかも知れない。今、ここで、コペンハーゲンで、決断しなければなりません。私の友人、グレイシーは書きました。「コペンハーゲンでは、みなさんに強くあって欲しい」キャンベラに住む、6歳の女の子です。世界の小さなこどもたちが、望んでいます。世界のリーダーたちに問いかけたい。今週末、家庭に戻ったとき、自分が持てるすべての力を発揮して、気候変動の危険に立ち向かったと、自分のこどもの目を見て言い切れますか」

この3国だけでなく100を超える声明を比べてみて、日本の声明はずいぶん見劣りすると感じたのは、私だけでしょうか。
経済産業省、環境省、外務省、・・・いったいどの省が主導して書かれた声明でしょうか。まさか、小沢環境相が自分で書いたとは思えませんが・・・。
支援金額を明示したのは、たしか日本だけです。何でも「カネ」で解決しようとするような声明が、情けなく思えます。
来年の生物多様性の会議COP10のホスト国はいいですが、EUと米国が主導で進む会議の流れについていけなかった温暖化防止京都会議の二の舞にならないことを祈ります。
なにしろ、COP15にしてもCOP10にしても国内の政策すら満足にできてないのですから。

韓国のことは詳しくないので置いといて、私はオーストラリアのラッド首相の絶大なファンです。彼の演説に大きな拍手を送りたい!

彼は、2007年に11年間続いた保守連合政権を倒して、政権交代を実現させました。
当時のオーストラリアは株価が毎年20%ずつ上昇している好景気で、前政権は失業率も半分以下に改善していたのです。 
それでも、オーストラリアの有権者たちは前政権ではなく、労働党のケビン・ラッド党首が掲げた「イラク駐留オーストラリア軍の早期完全撤退」と「地球温暖化防止のための京都議定書の批准」のほうを選択しました。
オーストラリアの有権者たちにとって、目先の景気よりも、大儀のない戦争に反対することや、未来の子どもたちのための気候変動対策のほうが、重要だったわけです。

このように、ラッド首相の言葉には、有権者に彼を選択させ得た重みと説得力があります。

どうか、彼の感動的な演説を、もう一度じっくりと味わってください!

ドイツの環境大臣が提案したように、日本政府がEUや韓国、オーストラリアと同盟を結んで気候変動政策に取り組む日が早く来ますように・・・!

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