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2008年12月17日 (水)

官僚が足を引っ張る「地球温暖化防止政策」

前回の日記の続きです。


日本でも1990年10月23日に「地球温暖化防止行動計画」なるものが策定され、気候変動対策のスタートはドイツと同時期でした。


そして、2002年3月19日に地球温暖化対策推進本部が決定したという「地球温暖化対策推進大綱」なるものにとって代わられました。そこには以下のような記述があります。(以下、引用、括弧内赤字は筆者のコメント


3.これまでの取組と京都議定書の6%削減約束の達成への挑戦


我が国は、1990年10月に「地球温暖化防止行動計画」を「地球環境保全に関する関係閣僚会議」において策定し、二酸化炭素の排出量を2000年以降1990年レベルで安定化することなどを目標にして、各種の対策を講じてきた。この目標値は、気候変動枠組条約においても言及されているが、2000年においてこれは達成されていないとみられる。 (10年も経っているのに具体性がなく、なんだか他人事のような書き方ではありませんか?)


 一方、1997年12月の京都議定書の採択を受けて、1998年6月に、地球温暖化対策推進本部において、2010年に向けて緊急に推進すべき地球温暖化対策をとりまとめた「地球温暖化対策推進大綱」を決定した。 (「地球温暖化防止行動計画」との脈絡は、いったいどうなっているのでしょう?)


 また、「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年法律第117号。以下「地球温暖化対策推進法」という。)の制定及びそれに基づき基本方針を策定することなどを通じて、我が国における温暖化防止対策推進の基礎的な枠組みを構築するとともに、「エネルギーの使用の合理化に関する法律」(昭和54年法律第49号。以下「省エネルギー法」という。)の改正等の各種の国内対策を実施した。


 しかしながら、温室効果ガスの排出量は依然として増加しており、1999年度の我が国の温室効果ガスの排出量は、基準年(二酸化炭素、メタン、一酸化ニ窒素については1990年、ハイドロフルオロカーボン、パーフルオロカーボン、六フッ化硫黄については1995年。以下同じ。)比で約6.9%の増加となっている。また、現行の対策・施策だけでは、2010年の温室効果ガスの排出量は基準年比約7%程度増加になると予測され、京都議定書の約束を達成するためには、今後一層の対策を進めていくことが必要となっている。(今後一層の対策が進められたかどうかは、前回の日記に転載した河野太郎氏の一連のメルマガを高覧ください!)引用ここまで

 

ドイツの報告書と決定的に違うのは、何が達成されて何がされなかったかなどの過去の分析や検証、そしてそれらを踏まえた今後の具体策が無いことです。とにかく、スローガンだけ掲げているとしか言いようがありません。まるで、しょっちゅう交替する首相の「所信表明演説」のようです。


PDFファイルで72ページにも及ぶこの「地球温暖化対策推進大綱」には、我が目を疑うような対策が載っていました。一部抜粋しましょう。果たしてどれだけの方々が、これらの対策のことを知っており、また律儀に実践されたのでしょうか?欧州人5人に話してみたら、全員冗談としか受け止めませんでした。


一般国民による取り組み:脱温暖化型のライフスタイルの実践(これにより、この項目の30%(約676~937万t-CO2)は削減できる予定だったのでしょうが・・・)


•  家族が同じ部屋で団らんし、暖房と照明の利用を2割減らす(341~467万t-CO2)
•  テレビ番組を選び、1日1時間テレビ利用を減らす(19~35万t-CO2)
•  シャワーを1日1分家族全員が減らす(93万t-CO2)

 

そして、これらの計画や大綱は、いつのまにか、2005年4月28日の「京都議定書目標達成計画」に姿を変えたのでした。PDFファイル75ページにおよぶ計画の最後は、次のように締めくくられています。前回の日記に書いた現実と比較していただきたいと思います。


(以下、引用、赤字は筆者による


おわりに


(地球温暖化問題とは)
地球温暖化問題は、人類の生存基盤に関わる環境問題である。
地球温暖化の進行を防ぐため、温室効果ガスの濃度を安定化させるという
気候変動枠組条約の究極的な目的を達成するには、世界全体の二酸化炭素の
排出量を早期に少なくとも現在の半分以下にすることが必要とされている。
しかしながら、温室効果ガス、とりわけ二酸化炭素は、経済社会活動や国民
生活の日々の営みから発生するいわば副産物であり、その削減は容易でない。
また、我が国一国の取組では足りず、地球規模で温室効果ガスの総量を削
減していく必要がある。


(地球温暖化問題に取り組む我が国の立場
こうした課題を踏まえれば、我が国は自ら、持続可能な発展を可能とする
技術革新、社会システム変革、一人一人の環境意識の向上に取り組むととも
に、環境先進国として、国際的な連携に基づく地球温暖化防止に向けた取組
を主導していく
必要がある。
国民生活と産業活動の基盤を海外の自然資源に依存する資源小国でありエ
ネルギー・環境問題を克服するための技術を培ってきた我が国こそ、また、
「もったいない」という言葉に代表される自然と調和した生活文化と歴史を
有する我が国こそ、自然資源を効率的に利用する魅力的な社会像を示し、人
類の安全・安心に向けて誰よりも努力し、成果を示し、世界に寄与すべき
ある。


(本計画で目指したこと)
こうした観点から、本計画においては、京都議定書の約束達成という当面
の目標を確実に達成する
視点と、長期的、継続的な排出削減に向けて第1約
束期間以降を見据えた視点とを同時に持ち、持続可能な発展を可能とする社
会の実現につながる各種の対策・施策を盛り込むことに努めた。

また、国ごとの様々な社会条件や歴史・環境の違いなどを乗り越えて一致
協力し、持続可能な世界の構築に向けた取組を前進させていくため、長期的
な視点に立った技術革新と地球規模での普及を進めるとともに、世界のすべ
ての地域において、意識の変革、社会システムの変革、技術の開発・普及・
投資が行われるよう取り組むこととした。


(今を生きる我が世代の責務
気候変動の影響は、既に世界各地で顕在化しつつあると考えられており、
ここ数十年の人類の行動が、地球の将来を左右する。地球温暖化問題の解決
が成功するか否かは、まさに、今を生きる我々の決断と行動にゆだねられて
いる。
重要なことは、我々自身が、過去の歴史を知り、現状を的確に把握し、将
来を展望することである。現実を知り、将来を見通すことによって、地球環
境を守る価値を見いだし、社会の有り様を変革し、一人一人の日々の行動を
変えていくことができる。


(国民へのメッセージ)
おりしも「自然の叡智」をテーマとする愛知万博が開催されている。それ
が世界全体にとっても、長く有益な恵みとなるよう、自然と共生する日本古
来の叡智にかんがみ、国民全体で地球を守る努力をしていく
こととしたい。

(引用ここまで)


見事な作文ですね~!環境省の官僚が書いたのでしょうか?


 

さて、昨日に引き続きドイツの話に移ります。


ドイツ連邦政府の諮問機関である環境問題専門家委員会(SRU、1970年代から存在し、定期的に政府に勧告します)は、2001年に「1990年と比較し、2020年までにCO2を40%削減することは必要不可欠であり、同時に、その取り組みは、経済的効果をもたらす」と発表、政府に国家目標とするよう勧告しました。


そして、ドイツ政府は2007年からこの目標達成に向けての包括的なプログラムを着々と準備してきました。その中の一つに、再生可能エネルギー(日本では、新エネルギーという言い方をするようですが、英語やドイツ語に準じます)による電力の比率を25−30%に増やすという目標もあります。


再生可能エネルギーが、技術力ではどこにも引けをとらない日本で普及しない原因は、やはり官僚にあるようです。


日本の官僚が気候変動対策の足を引っ張る事例にはきりがありません(でも、この政策の例はおそらく国の政策全体の氷山の一角でしょう)が、もう一つだけ紹介します。


再び、河野太郎氏のメルマガ「ごまめの歯ぎしり」から転載します(赤字は筆者による)。


2008年12月10日号−2


IRENAという国際機関がある、いや、できる。
International Renewable ENergy Agency(国際再生可能エネルギ
ー機関
)という再生可能エネルギーの推進を行う国際機関の設立が
この10月に国際的に合意された。

2009年の1月26日と27日にドイツのボンで設立会合と条約
への署名が始まり、準備委員会の第一回会合が行われる。

2008年10月の最終準備会合には51カ国が参加した。
ドイツ、イギリス、フランス、イタリア、アルゼンチン、チリ、ブ
ラジル、オーストラリア、韓国、インド、インドネシア、タイ、ベ
トナム、UAE、エジプト等々。あれっ。

日本は?

日本はまだ参加表明をしていない。
経済産業省が猛烈に反対をしている
。経済産業省から事務局長を出
しているIEAと重複する可能性のある組織はいらないと、参加を
促しに来日したドイツ政府の特使にすげない態度をとって追い返し
た。

 

IEAはこれまで、再生可能エネルギーへの取組がとてもとても遅
れていた。IRENA創設の話が出て、あわてて取組を始めた。
しかし、IRENA創設が最終的に確定した今、IEAと重複する
からというのは屁理屈だ。


今や、経済産業省は経団連以上に再生可能エネルギーに後ろ向き、
というよりもストップさせようと必死だ。
国益よりも電力と鉄鋼への気遣いだけだ。

 

外務省で地球温暖化を扱うのは地球規模問題審議官だが、IREN
Aを扱っているのは経済局の経済安全保障課で、ここはまったく後
ろ向きだ。

 

環境省は推進派だが、ここは全く突破力がない。

 

官邸のリーダーシップを発揮しないと、省益ばかり考えている役所
に足を引っ張られることになる。

太陽光で世界一を目指すとか何とかいっている日本が、再生可能エ
ネルギーを推進する国際機関に入らないことがあってはいけない。

日本は、福田内閣のときに、国際再生エネルギー会議の2009年
の開催誘致に失敗した。いや、正確にはお膳立てが整っていたのに
省庁間の対立で手を挙げなかった。

 

IRENAに参加しなかったら、再生可能エネルギーの国際ルール
作りに参加することができなくなる。アジアにおける再生可能エネ
ルギー導入のリーダーシップも放棄することになるだろう。
日本初の技術の世界展開にも支障が出るかもしれない。

 

参加することのデメリットはIRENAの予算に対する拠出金を負
担することになる。約5億円だ。
外務省は、無駄遣い撲滅の河野チームの目が光っているから、5億
円の新規は出せないとのたまわった。
我々に出てこいというならば、喜んで出て行って優先順位の低い予
算を5億円ぶった切る。

 

1月20日にオバマ政権が発足すれば、IRENAにアメリカも参
加するかもしれない。麻生政権としては、再生可能エネルギーに後
ろ向きの姿勢をとることはできない。(転載ここまで)

 

与党自民党の国会議員ですらこれほど問題提起をし続けているのに、官僚主導の日本の政治が変わらないのは、政治家たちが怠慢だからでしょうか、あるいは官僚たちが絶対に変えないほどしたたかだからでしょうか、それとも日本の国民が「チェインジ!」を望んでいないからでしょうか?

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