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2008年11月29日 (土)

減らない理由

Mixiのおおともさんから許可をいただいたので、ブログを転載します。


おおともさんのブログを読んでいるとなんとなく、問題提起、情報収集の仕方などにドイツの公共放送が政治や行政の問題点を報道する番組と共通点があるような気がしたので、どうしても紹介したいと思いました。


例えばドイツの政治番組には、おおともさんの両親や家族のような被害者から連絡が入って取材をし、番組にすることもよくあり、おおともさん個人がその後とったような行動を、番組制作者がジャーナリストとして続けるわけです。


高齢化社会の進む中、このような詐欺の被害が減るどころか増えているという背景を知ることは、とても重要です。私自身、高齢で年金生活者の両親がいるので、犯人が女性ならば他人事では済まされない事件です。それなのに日本のマスメディアは、情報の受け手の立場になって本当に受け手が知るべき情報を提供することを、放棄している気がします。もしかすると、サラリーマンジャーナリストは、そのような情報提供のノウハウすら身に着けていないのかもしれません。


おおともさんはジャーナリストではありませんが、本職のジャーナリストにはこのブログのような切り口の報道姿勢を見習ってほしいと思います。


以下 http://mixi.jp/view_diary.pl?id=982464733&owner_id=3695052より転載


減らない理由 2008年11月03日02:52

 

10/26日曜日18:46。母からの電話が鳴った。
「もしもし。どうしたの?」
「風邪ひいてない?」
「いや、ひいてないけど、声変かな?」
なんか、からかうような口調だった。声を聞いて変だと思ったんじゃないな…昼間にうわさをしていたか何かで、くしゃみがとまらなかったんじゃない?っていう感じの口調だった。

 

この推測は半分当たっていて、半分外れていた。母は私が風邪をひいていないことを声を聞く前から確信していたし、しかし、噂話をしていたわけではない。

 

ほんの少し前、“私”から実家に電話があった。
「僕だけど、携帯をトイレに落としちゃって。新しいのに変えたから電話番号を控えておいて。体調が悪いんだけど(時折咳をしながら)、今日は病院に行けなかった。明日の朝行くから、9時頃に電話に出られるようにしておいて欲しい」
こんな内容だったようだ。

 

そう。振り込め詐欺であろう。母は途中で気づいたらしい。しかし、どんな展開になるか知りたかったから最後まで聞いたのだそうだ。つまり、彼女は引っかからなかった。

 

おそらく、振り込め詐欺犯と思しき男性は、次の日の朝に電話をかけてきて、たとえばこんな風に言うのだろう。
「○○という病気で緊急手術が必要だといわれた。お金を先払いしないと手術ができないらしい。だから×百万を□△口座に振り込んで欲しい」。たぶん、泣きながらという演技つきで。

 

私は母に「新しい電話番号」をメールで送るように頼み、それを警察に届け出ることにした。母は引っかからなかったが、同じ電話番号から多くの人に電話をかけていることは間違いないし、その中の誰かが引っかかってしまわないとも限らないからである。そして、警察に連絡をすればそれを防ぐべく手を打ってくれるだろうと確信していたからだ。

 

ここで、振り込め詐欺について振り返ろう。
この詐欺は、かつて「オレオレ詐欺」と名づけられたのが2003年頃。平成16年版の警察白書には「2最近の特徴的犯罪」の筆頭に、「いわゆるオレオレ詐欺」と題して次のような記述がある。

 

 平成15年5月以降、息子その他の親族を装うなどして電話を掛け、交通事故の示談金等の名目で現金を要求し、動転した被害者に指定した預貯金口座に現金を振り込ませるなどしてだまし取る、いわゆるオレオレ詐欺の発生が目立っている。
(中略)
15年中の認知件数は6,504件(うち未遂が2,185件)、被害総額は約43億2,000万円、検挙件数は179件、検挙人員は58人であった。
http://www.npa.go.jp/hakusyo/h16/hakusho/h16/html/F4002010.html

 

4月までは100件に満たなかった認知件数が、5月から一気に400件を超え、10月からは3ヶ月連続で1000件を突破していることから、平成15年(2003年)が振り込め詐欺が爆発的に増え始めた年であるといってよさそうである。

 

それから7年が過ぎた。マスコミでは度重なる詐欺の被害が報道され、もちろん検挙者も出てこれもまた大きく報道されてきた。2004年以降、認知件数、被害額は次のように推移する。
認知件数:25667→21612→19020→17930
被害額(億円):284→252→255→251
2004年に一気に4倍近くに増えてから、件数こそ緩やかに減りつつあるが、被害額はほぼ横ばい、といった状況である。検挙率は4年通算で11.7%とべらぼうに低い。警察の完敗であるといってよかろう。
(数字はhttp://www.npa.go.jp/hakusyo/h20/toukei/t1-09.pdfに基づく)

 

そして、2008年。8月までに認知件数は15301件を突破し、単純計算で過去最悪の2004年に次ぐ勢い。被害総額にいたっては、同じく8月までに214億を突破し、過去最高になることが確実視される事態となった。
(数字はhttp://www.npa.go.jp/sousa/souni7/furikome_H20_1-8.pdfに基づく)

 

この数値が発表されるや、マスコミは連日のように特集を組んだり、警察も撲滅をスローガンにATMや銀行へ警察官を派遣?したりと、過去最悪の事態を下半期の努力で何とか防ごうとしている。かのように見えていた。少なくとも私には。

 

私の話を続けよう。母から電話番号を送ってもらった私は、出先だったこともあって携帯で「振り込め詐欺」をググった。おそらくこの手の情報を一括して吸い上げる窓口が警察庁にでも存在し、そのフリーダイヤルにでもかければ犯罪予防の一翼を担えるであろうと思ったからである。そして、一つの電話番号を警察庁のホームページに発見した。

 

実はここで私はミスを犯している。警察庁のページだと思ったのは警視庁だったのである(http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/seian/koreisagi/koreisagi.htm)。つまり、この後私は警視庁に電話をかけることになる。さて、続けよう。

 

出先から家に戻った私は先ほど記録した番号に電話をかけた。簡単な事情説明のあと、怪しいと思われる電話番号を知らせ、そして情報提供のお礼を言われて電話が切られる。フリーダイヤルではなかったが、ものの3~4分だろうからまぁいいや、と思いながらの電話だった。実際は25分にも及ぶ“格闘”が待っているとは。。

 

出たのは警視庁の「交換」だった。警視庁と交換との二つに不思議に思いながら、要件を告げる。すると、受け付けた女性が驚くべき言葉を口にした。

 

お母さんは神奈川県在住なんですよね。それでは、神奈川県警の代表番号をお知らせしますので、そちらにおかけ直しください。

 

振り込め詐欺は間違いなく広域犯罪である。そして、同種の詐欺が急増してから7年の月日が過ぎ、そしてさらに過去最悪の被害が記録されようとしているさなか、“東京都警”は神奈川県警へたらいまわしをしようというのか?自分が事件に巻き込まれそうになったという驚きなどは吹っ飛ぶくらいの衝撃を受けた。

 

彼女は以下のように説明した。
・電話の受けてが神奈川県にいる以上、この件は神奈川県警の担当になる
・警察庁等の全国を束ねる組織に、この件に関して一括して情報提供を受ける電話番号を私は知らない
だから、神奈川県警へ、という主張を繰り返された。

 

母は神奈川、私は宮城、犯人は国内はおろか世界中のどこか。こういう犯罪を都道府県単位で取り締まろうとしているのか?何かの間違いじゃないか?
驚きのあまり、こう食い下がった私を待っていたのは、「それでは生活安全課に回します」という面倒くさそうな、そう、たらい回しの演技をしたい役者さんにとっては最高の手本になりそうな、そんな言い方だった。

 

ちょっと、そういうことではなく…と言いかけた私の耳に保留音が流れる。しばらくたったあと、生活安全課に電話がつながった。

 

電話口に出た刑事さん?は最初は少しぞんざいだったが、最終的にはものすごく申し訳なさそうな口調に変わった。途中で変わったもうちょっと偉い?人(この人は名乗った)も同じく申し訳なさそうだった。つまり、こういうことだ。

 

1)振り込め詐欺と思しき電話がかかってきたという情報を一括して集める仕組みは存在しない
2)電話番号が判明したとしても、その番号に電話をして事情を聞くなどの手続きはとられない
3)したがって、私が電話をしようがしまいが、この犯罪の存続に与える影響はまったく変わらない

 

一括した情報管理によって、同一番号について一定数の情報が寄せられた場合、その番号に対して事情聴取をするための電話をかけるなどは、犯罪の予防に非常に効果的であることは論をまたない。しかし、犯罪の急増から7年たった今も、その仕組みは存在しないのである。

 

おっしゃるとおり、たしかに有効だと思います。しかし、そういった仕組みはまだありません。
まだって、何年たってると思ってるの? 昨日今日出てきた新たな犯罪じゃないでしょ。
おっしゃるとおりですね。
本気で撲滅する気があるとはとても思えないけれど。
おっしゃるとおりです。本当に恥ずかしく思います。

 

こんな感じだった。電話口に出た一人の警察官に何を言っても始まらないことはわかっていた。だから「あなたに言っても仕方ないのかもしれないけれど…」「あなたが悪いわけじゃないだろうけれど…」と何度も言った。それでも、文句を言いたかった。

 

犯罪予防に貢献できる。そんなちょっとした「いい気分」もあった。それが吹っ飛んだことに対する勝手な怒りもある。しかし、彼らの対応はあまりにもお粗末であるといわざるを得ない。

 

代表番号ではたらい回しにされた印象がある。
そんなことはないと思います。情報は丁寧にお聞きすることになっています。
いや、すぐに神奈川県警の代表番号を知らせてきた。
そうですか。それも大変申し訳ありませんでした。
最後に確認をするが、この番号によって詐欺に遭う人が出てくることは予防できないのか?
その通りです。現時点では何も出来ません。
母には、明日の朝、電話がかかってくるわけだ?
その通りです。

 

この犯罪がなくならないばかりか、増加傾向にあることの原因がここにある。


いま、このコラムを書くために裏を取っていて初めて知ったが、実は全国統一の相談窓口は存在する。警察庁・法務省の連名で作成された「振り込め詐欺撲滅アクションプラン(http://www.npa.go.jp/sousa/souni8/bokumetsu_action.pdf)」には4つのプランがあげられているが、その4番目に「被害予防活動の徹底」がある。ここには「多額の送金を急き立てるような電話を受けた際には、振り込む前に、家族や警察の相談窓口(♯9110)等に連絡して真偽を確認するよう広報を徹底する」とある。情報を一元管理して予防活動を行うことまでは打ち出されていないが、相談窓口があることは確かのようだ。

 

ここで問題が二つある。一つは、警視庁の受付嬢も、生活安全課の担当者たちも、この番号が存在していることを私に告げなかったことだ。「知らなかった」ではなく「告げなかった」としたのは、彼らがこの番号の意味のなさを知っているが故に教えなかった可能性もあるからだ。それが二つ目の問題。
この番号、検索すればいろんなページが出てくるが、その中の一つ、政府インターネットテレビのページによると「緊急時以外の警察への相談電話番号があるのをご存じですか?国民の皆様の安全と平穏に関する相談窓口が「#9110」なのです。」ですって。つまり、よろず相談。110番に緊急性の低い電話がかかってくることを防ぐために設置された番号。秋田県警のページによると「全国どこからでも、家庭の電話(プッシュ回線)や公衆電話、携帯電話、PHSでプッシュすれば、最寄りの警察総合相談窓口にダイレクトにつながります」ですって。

 

これまた警察庁も法務省も本気じゃないと言わざるを得ない。やっぱりこの犯罪、まだまだ減らないかもしれない。

 

10人に1人くらいしか捕まらないなら(しかも認知件数レベルで)、非常にローリスクでハイリターンが見込まれる“投資”とも考えられるかも、などという悪い冗談を言いたくなるほどお粗末な警察の対応だった。

 

次の日の朝、“私”からは予告どおり実家に電話がかかってきた。ただそれは、予告された9時ではなく10時過ぎ。母はたまたま手が離せずに父が出た。事情を知っていた父は母に代わろうとしたらしい。しかし、何かを察したのか“私”は電話を切ったそうだ。
父は「お前の声にそっくりだった。どうやって似た声の人を探してくるのか…あれなら騙されるだろう」と訳のわからないことを言っていた。つい最近まで理論の世界で生きてきた人間をして、こんな風に思わせてしまう力がこの犯罪にはある。7年の歳月を経てなお“色あせない”力である。

(転載ここまで)

 

なお、転載記事にいただいたコメントに対しては、こちらからコメントを書かない場合がございますので、御了承ください。

 

 

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